日本ワイン専門店「ぶだう酒屋」を立ち上げるにあたって、最初に取り上げたいワイナリーは決まっていました。
「丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)」です。
丸藤葡萄酒工業の大村社長は、私がはじめて訪問した日が会社の休みだったにもかかわらず自らブドウ畑の案内、ワイナリーの案内を熱心にしてくださいました。そしてその後も何度となく訪問しましたが、大村社長がいらっしゃらない日には、社員の方も同様の対応をしてくださいます。
こんな大村社長のお人柄のファンになって分かったことがあります。「やっぱりそんな方の造るワインだから美味しいんだ!」ということです。
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丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)
丸藤葡萄酒工業さんのサイトに載っていることをそのまま書いたような説明で恐縮なのですが、丸藤葡萄酒工業さんについて紹介させてください。
丸藤葡萄酒工業は大村春夫社長のもと、新たな試みをどんどん行い、良質なワイン造りに励んでいるワイナリーです。
創業は1890年(明治23年)ですから、134年の歴史あるワイナリーです!
ただ、ワイナリーの起源となる出来事は、さらに13年さかのぼります。
大村春夫社長の高祖父(ひいひいおじいさま)である大村忠兵衛氏が明治10年(1877年)に大日本山梨葡萄酒会社設立の際、出資者の一人となります。この大日本山梨葡萄酒会社は現在のメルシャンです!
その後1882年に、創始者の大村治作氏(大村春夫社長の曽祖父(ひいおじいさま))がワインの醸造を開始し、1890年に正式に葡萄酒醸造免許を取得します。
そして、祖父の澄蔵氏、父の忠雄氏と受け継がれ、現在の大村春夫社長はワイナリーの四代目ということになります。
1949年(昭和24年)には、法人化し、1957年(昭和32年)に商標名をルバイヤートとしています。
さきほど、公式サイトの大村社長のご挨拶には、まさに大村社長のお人柄とワインの方向性が表れており、あらためて拝見して、胸に熱いものがこみ上げてきました。
料理に合わせてワインを楽しんでいただくことは勿論、ワインの奥深さやワインにまつわる楽しさなど1本のワインを通して心温まる交流が皆様と共に作り出せればと思っております。より一層、味わい深いワイン造りに精進してまいります。ご支援の程宜しくお願い致します。
ルバイヤートワイナリーの大村社長のご挨拶ページより:http://www.rubaiyat.jp/about_us/greetings/
ルバイヤートワイナリーの語源
先ほど書いたようにワイナリーの正式名称は丸藤葡萄酒工業なのですが、ワインの銘柄としてはルバイヤートという商標でシリーズ化されているため、ワイナリー名もルバイヤートということのほうが多いような気がします。
このルバイヤートというのは、11世紀ペルシャの詩人オマル・ハイヤームの四行詩集『ルバイヤート』から名付けられています。命名は日夏耿之介氏。
日夏 耿之介(ひなつ こうのすけ、1890年(明治23年)2月22日 – 1971年(昭和46年)6月13日)は、日本の詩人、英文学者。本名は樋口國登(ひぐち くにと。通称は圀登)[1]。号は夏黄眠、黄眠道人、黄眠堂主人など30数種類を数える。広範な学識と多岐にわたる文学活動で「学匠詩人」と称される。
Wikipedia「日夏 耿之介」:https://ja.wikipedia.org/wiki/日夏 耿之介
いきさつは、1957年(昭和32年)に、三代目社長である大村忠雄氏の知人の紹介で日夏 耿之介先生がワイナリーにいらっしゃり、ワインを大変気に入ってくださったことから、後日商標名の命名を知人づてにお願いしたところ、快く引き受けてくださったのだそうです。
そのときの、手紙には2つの候補と新商品用の別名の提案があり、それは次の3つでした
- ルバイヤット(ルバイヤート):インテリ向け。オマル・ハイヤームの詩集の名にて。
- アンシャンテ:大衆向け。フランス語の「気持ちの良い」「うっとりする」の意から。
- シャリオ・ドオル:新発売品に。フランス語で金の馬車の意味。
この経緯から、ルバイヤートに決まったようです。公式サイトには日夏氏の手紙が紹介されています。
二種と仮に定め、第一はインテリ向き
これを
RUBAYAT ルバイヤット
と命名、ペルシャ十一世紀天文学者詩人 Omar Khayyám オアマ・カイヤムの詩集の名にて、
原名はルボウイヨウトと発音するが、ルバイヤットの方が語呂もよく通りがよく、ブドーの原産地の人にて非常に葡萄酒の好きな詩人で ブドー酒と美女とを歌つた詩が多く 卋(世)界的大詩人の一人で、日本のインテリは皆その名を知る故、ルバイヤットと名附けて発売したら、必ず「やったな」と思ふでせう。第二は一般大衆(向)きで
ENCHANTÉ アンシャンテ これはフランス語で、気持ちのよい、ウットリする、等の意ですから、フランス好みの大衆には可(よ)いでせうか。右二種選びましたが、尚黄色系統の新発売品には シャリオ・ドオル CHARIOT D’OR(金の馬車といふ意)といふ名も乙でありませう。
気に入らなかつた(ら)お棄て下さい。どれも。ルバイヤート公式サイト「ルバイヤートの由来」:http://www.rubaiyat.jp/means_rubaiyat/
ワイナリーの改装に心躍りました
ルバイヤートのボトルが並ぶワイナリー内私の敬愛すべき大村春夫社長は、ワイナリーの改装も行っております。
写真は私が2017年の夏に訪れた際の写真ですが、昔の母屋(おもや)を改装して、テイスティングルームのようにしていらっしゃいます。
このテイスティングルームは一般公開されていませんが、その手前のルバイヤートのボトルが並んでいるところまでは入ることができます。
勝沼ワイナリーズクラブ
ルバイヤートのワインボトルは、勝沼ワイナリークラブの勝沼ボトル(1989年の新酒まつりで初お目見え)を使用しています。
この勝沼ワイナリーズクラブは、日本のワイン産業が甘口から辛口にシフトするなか、優良な輸入ワインに負けない日本固有のワイン用ぶどうである甲州によるワインを育て、守り、向上させるクラブだと私は感じています。
実際、勝沼ワイナリーズクラブのWEBサイトを見ると
- 勝沼町のまちづくりの一翼を担い、ブドウの景観の保持に努める
- 甲州種ワインの品質の向上をアピールしていく
勝沼ワイナリーズクラブクラブとは:http://kwc1987.com/intro/introindex.htm
という2つの目的で設立されたと書かれています。
設立当時は、勝沼ワイナリークラブだったようですが、現在は勝沼ワイナリーズクラブ(「ズ」がついている)となっており、複数のワイナリーでクラブを運営しているという意味を強めたのではないかと想像できますね。
設立は1987年9月。
地元資本の中小ワインメーカー12社の代表者(代理を含む)が集まり、フランスのA.O.C.(原産地呼称制度)に倣い、勝沼が全国に先駆けて独自のワイン法を制定しました。
このクラブに認められた甲州ワインは、さきほどのクラブのロゴマーク入りの特別ボトルに詰めることができます。
しかも、クラブのメンバーなら誰でもこのボトルを使えるわけではないのですね?
はい。クラブが定めた甲州種ワインの品質基準をクリアしてはじめて、このボトルが使えるのです。
その品質基準は次のようになっています。
- 勝沼産の甲州ぶどうを100%使用、且つその収穫地区や糖度の記載
- 審査会提出ワインの醸造過程の詳述
- 品質審査(20点法による官能審査)での合格
クラブのメンバーなら1、2はクリアするのに苦労はさほどないでしょうが、3、つまり美味しくないといけないという部分に、やはり”こだわり”を感じますね!
設立当時の勝沼ワイナリークラブメンバー(50音順)
- 麻屋葡萄酒株式会社 雨宮清春
- 岩崎醸造株式会社 宮崎辰之助
- 勝沼醸造株式会社 有賀雄二
- 白百合醸造株式会社 内田多加夫
- ソウリュー葡萄酒醸造場 鈴木卓偉
- 株式会社ダイヤモンド酒造 雨宮壯一郎
- 中央葡萄酒株式会社 三澤茂計
- 原茂ワイン株式会社 古屋真太郎
- まるき葡萄酒株式会社 池田俊和
- 丸藤葡萄酒工業株式会社 大村春夫
- 大和葡萄酒株式会社 萩原保樹
- 有限会社山梨ワイン醸造 野沢貞彦
勝沼ワイナリーズクラブのロゴマークは高野正誠と土屋龍憲だった!
あらためてロゴマークを見てみましょう。
力こぶのようにも見えるこのマークですが、これは日本ワインを語る上で切っても切れない二人、高野正誠と土屋龍憲をシンボル化したものです。
高野正誠(たかのまさなり)と土屋龍憲(つちやたつのり)とは
この二人は明治10年にフランスに留学した日本ワインのパイオニアのうちの2人です。
明治維新後、国家の近代化を推進した政策(殖産興業⇒wikipedia「殖産興業」)のうち、山梨県と北海道ではワイン造りが奨励されたようです。
これは、殖産興業にブドウ栽培とワイン生産を積極的に取り入れようとした大久保利通の働きかけが大きいようで、大久保利通は日本ワインのまさにパイオニアといえます。
山梨県ではその殖産政策の実現と近代化に向けて県令である藤村紫朗が、欧米式ブドウ栽培と醸造施設のモデル県にしようと奔走し、ページの最初の方で書いた大日本山梨葡萄酒会社の創設に働きかけ、その株主の1人にもなっています。
この大日本山梨葡萄酒会社は、まずは醸造技術や醸造法を指導できる有能な人材の育成に目を向け、株主の1人でもあった高野正誠と、発起人のひとり土屋勝右衛門の長男の土屋助次朗がフランスへ派遣されることになります。
1877(明治10)年10月10日、フランス語も全く分からない中、山梨県、いえ日本のワイン産業の期待を背負った青年二人は日本を出発します。
フランスでは、語学を学び、昼は畑作業や醸造作業、夜はその記録を行います。まさに不眠不休で1年間勉強したようです。そもそも、言葉も分からない時点から1年でこれらを学ぶことは無理な注文だと思いますが、私たちには考えられないほどの使命感があったのでしょうね。
さて、大日本山梨葡萄酒会社は彼らの帰国を待ってワイン醸造に着手する状況であり、彼らの帰国後の1879(明治12)年に甲州による最初のワインを仕込むことになります。こうして甲州ワインは日本ワインとしての道を進んだのでした。
さて、話を勝沼ワイナリーズクラブのロゴに戻しましょう。
さきほど、紹介したボトルのロゴは、この高野正誠と土屋龍憲をシンボル化したものなのです。
私たちワインに携わる業界人でさえ、彼らの活躍は知らないことが多いのですが、ボトルのロゴを彼ら2人にするところに、勝沼ワイナリーズクラブの甲州への愛や地元への愛を感じます。
ルバイヤートのワイン一覧
寺井さん、ありがとうございます。
さて、では最後に、当店『ぶだう酒屋』のルバイヤートのワインをご紹介します。
1本からご注文可能ですが、送料などを考えると複数本がおすすめですし、ぜひルバイヤートのワインを飲み比べてみてほしいと思います。
『丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)』のテーブルワイン的存在「ルバイヤート」
まずは、お手軽なテーブルワイン的存在のワインからご紹介いたします。
「ルバイヤート(白)」と「ルバイヤート(赤)」です。
ヴィンテージ記載なしで、ぶどう品種もブレンドされます。気軽に楽しんでいただけるので、白をキンッと冷やして屋外バーベキューと一緒に楽しんだりできます♪
ルバイヤート ルージュ
『丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)』のレギュラーワインシリーズ
丸藤葡萄酒工業のレギュラーワインシリーズは、スタンダードクラスのワインですが、2,000円以下のものから、3,000円を超えるものまであり、ぶどう品種も甲州100%もあれば、国際品種を使ったものまで幅広いです。
『丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)』を代表する「甲州シュールリー」
私は、このワインを丸藤葡萄酒工業を代表するワインと勝手に呼ばせてもらっています(笑)。
なんといっても、日本のワイン用ブドウ品種である甲州で造られており、さっき紹介した勝沼ワイナリーズクラブのボトルに入っていますから!
味わいは甲州らしいキレがありつつ、シュールリー(ワインが澱と触れている時間を長くする)によりコクもあるワインだと感じます。
飲む人によっては「日本酒のようだね」と言うほど、日本の旨味を感じます!
ルバイヤート(白)
ルバイヤート 甲州醸し
さきほどの甲州シュールリー同様に、甲州100%のワインです。
白ぶどう「甲州」を醸す(果皮浸漬させる)ことにより果皮の色もついた状態で、いわゆるオレンジワインと呼ばれる今流行の手法で造られています。
またこの手法により、通常の白ワインとしての甲州ワインと異なり、タンニン分も感じることができるので、普段甲州で合わせないお料理と楽しむことができます!
ルバイヤートソーヴィニヨン・ブラン
まずは、ソーヴィニョン・ブラン。
フランスのロワール地方を中心に、世界で栽培されているぶどう品種ソーヴィニョン・ブラン(SB)ですが、以前のルバイヤートのSBは、SBらしいハーブやグレープフルーツのニュアンスがあまり感じられませんでした(私のようなものが言うのも失礼な話ですが、日本ワインLoverとして皆様に率直な感想を書いています)
しかし、近年はSBの良さがしっかり出ていて、とてもイイなぁと感じます♪
2017 ルバイヤートソーヴィニヨン・ブラン
ルバイヤート シャルドネ「旧屋敷収穫」
続いて、シャルドネ。
シャルドネはソーヴィニョン・ブラン以上に世界中で栽培されている白ぶどうですね。
良質なぶどうを厳選しており、それを樽を使用して本格派の味わいに仕上げています。
品評会で金賞をとったこともあります。
2018 ルバイヤート シャルドネ「旧屋敷収穫」
ルバイヤート マスカットベーリーA樽貯蔵バレルセレクト
さて、赤ワインです。ぶどう品種は日本品種の「マスカット・ベーリーA」。
マスカットベーリーAは、チャーミングに仕上がっているワインが多いなか、このワインは結構しっかり系です!
ルバイヤートマスカットベーリーA樽貯蔵バレルセレクト
ルバイヤート プティヴェルド「彩果農場・北畑・試験園収穫」
最後はこだわりの赤ワインで、入手も難しかったりするので、リンク先を開いて在庫切れ表示になっていることもあるかと思います。
ご迷惑をおかけしますが、カート在庫とこの紹介ページが連動しておらず、かと言って、ここで紹介ナシにするのは気が引けるワインなので、ご紹介だけでもさせてください。
ぶどう品種は「プティ・ヴェルド」というフランスのボルドーで栽培される品種ですが、世界のメジャー産地ボルドーの中にあって、補助的な品種として使用されるため、どちらかというとマイナー品種でもあります。
そんなプティ・ヴェルドを大村社長が勝沼に合うと思って、いち早く使用し始めました。今では周りのワイナリーもプティ・ヴェルドを植えたりしていますが、私は大村社長が先駆けだと思っています。
数年連続金賞を受賞したり、サミットで使用されたりした話題のワインなので、先ほど書いたように品切れしやすいんです。
2017 ルバイヤート プティヴェルド「彩果農場・北畑・試験園収穫」
ほかにもルバイヤートのワインはございます!
一覧はこちらからどうぞm(__)m
『丸藤葡萄酒工業(ルバイヤートワイナリー)』のまとめ
いかがでしたでしょうか。
丸藤葡萄酒工業について、少しは私の想いが伝わりましたでしょうか。
本当に一言で説明すると
『私が大ファンな大村社長のワイナリー』
ということです(笑)。ぜひ、飲んでみてください^^
丸藤葡萄酒工業株式会社
http://www.rubaiyat.jp/